母のこと

進路に迷っていた10代のある日、長年自宅で陶磁器の教室を開いていた母が突然「ポーセレン(陶磁器)の世界大会に出場する」と旅立ち、

叔母たちが住んでいるアメリカへ一ヶ月ほど滞在し帰国の際に箱崎のターミナルへ迎えに行くと、母がブルーリボンのトロフィーを大事そうに抱えながらゲートの向こうから歩いてきたのを誇らしく思い、漠然とデザインの道に進む決心をしたのをよく覚えています。

そんな母が、昨年10月体調不良を訴え入院していた病院先で、奇しくも祖母と同じ命日に突然亡くなりました。

容態が急変し集中治療室の中で医療システムに組み込まれるように亡くなり、コロナ禍にて病床での会話も一切できないままの突然の別れに悔やみ、無念な気持ちを消化できずに過ごしてきたこの一年。

忙しくして気を紛らわせようとしたものの、ただ蓋をしていただけで無念さはずっと変わらずの日々のなか、母の部屋の遺品整理の際に、母は死の直前まで何か残そうとしていたようで、真っ新な陶磁器、顔料や筆が準備して置いてあり、私の未熟なスタンスに対し「あなたはどうなの?」と母から突きつけられているような気分になりながら部屋をあとにしました。

そして最近やたらと、老眼鏡をかけながら朝から晩までコツコツと作品作りをする母の姿を思い出すようになり、その母から受け継いだ制作者としてのスタンスとポジティブな価値観を持ってして、デザインという仕事を通して関わった方々に喜んでもらい世の役に立ってこそ、この気持ちを浄化できる唯一の道かな。と考えられるようになりました。

オフィシャルなブログなので真にプライベートなことは載せないようにと心がけておりましたが、どこかに残しておかないと忘れそうなので母への感謝の気持ちと共にここに記します。

この記事を書いた人

Sosuke

デザインで日本の産業を元気にする。をモットーに横浜馬車道でデザイン会社を経営しております。どうぞ宜しくお願い致します。
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